
えりか
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澄んだ空気、広大な緑のなかで、深く息を吸って生きていると、身体が素直に欲求を訴えてくる。
そこでいただく無の会のお米とお野菜は、お腹いっぱい食べてもすぐに身体に馴染んで、私を内側からつくりかえていく。
身体のめぐりが良くなって、たったの4日間の滞在で、自然に肌が生き生きとしてくるのを感じた。
私は今年の3月に大学院博士課程を修了したばかりのひよっこ研究者で、パキスタン地域研究を専門としている。
パキスタンでは、都市と農村にそれぞれ1年半くらい滞在して、現地のジェンダー規範「パルダ」に関するフィールドワークを行なってきた。
無の会へは、4年くらい前に偶然知り合った武生に誘ってもらって、お邪魔させていただく運びとなった。
無の会における4日間の滞在において、ひとが生きるうえで本当に必要なものは何か、を考えさせられたように思う。
たとえば、仕事は仕事として割り切って働いて、その対価をもとに「自分の時間」を楽しむという、現代を生きるわれわれがいわば当たり前であると思っている/思わされている生のあり方に対して、ここでは「生きること」と「はたらくこと」が密接に結びついているように感じた。
そして、自らを自然から切り離された存在としてみなしてしまいがちなふだんのものの見方に対して、ここでは自分が土や水、田や畑と地続きの世界で生きている、そして生かされていることに気が付く。
こうやって、私にとっての4日間の滞在は、余暇に対置されるものとしての「労働」や、客体化された存在としての「自然」といった、ふだんの生活のなかで自分が自明視しがちな概念を再考する機会に溢れていた。
こうした経験は、私がパキスタンでの長期滞在を終えて帰国してから、日本で暮らすなかで感じ続けてきた微かな閉塞感―息苦しさを考えるうえでのヒントを与えてくれたようにも思う。
それぞれに多様なバックグラウンドと、熱い志を有するひとたちの生に触れるなかで、生きていく可能性が拓けた感覚があった。そこで私は大きく息を吸うことができる。