
【ななえが畑にやってきた】by ななえ
Share
はじめまして、佐藤ななえと申します。札幌で会社員をしていました。5月より会津に移住し、自然農法無の会で野菜作りを学んでいます。こう挨拶すると「北海道でも農業は出来るのに何故わざわざ会津まで来たの?」とよく聞かれます。
元々は、10年ほど前に私の叔母が無の会のお米に出会ったことがきっかけでした。当時健康に良い食事を学んでいた叔母は、無の会のお米を一口食べた瞬間「このお米は何かが違う!」と感じたそうです。児島先生が掲げる無の会の理念に共感し、年に数回無の会の田んぼを見学に行っていました。
「ほとんどの田んぼの稲が倒伏する程の大きな台風が会津に来ても、無の会の田んぼの稲は根が力強く地中に張っているので倒れなかった。こういう力強いお米を食べていると、人間もちょっとやそっとの事ではへこたれなくなるよ!」と会社員生活でくたびれがちだった私はよく言われていました。
そこそこ都会な札幌での生活は何不自由ないものでしたが、6年程前から「もっと空気と水のきれいな場所で生活がしたい。自分の手で野菜を作れるようになりたい」という思いが強くなり、同時に「世の中がこれだけ激しく変化しているのに、このまま決まった枠の中で与えられた仕事を黙々とこなすだけで大丈夫だろうか?」「もっと自分の頭で考えて、自分の決定に責任をもって、自分の足で人生をしっかり歩む力を身につけるにはどうすればいいだろう?」と思い悩むようになりました。そんな折、叔母の遺してくれた縁を辿るように無の会を訪れ、その後さまざまなタイミングが重なり今に至ります。
無の会では野菜作りを担当しています。野菜畑に飛び込んでまず初めに驚いた事は、美味しい野菜が出来るまでにとてつもない手間暇がかかっている事でした。キャベツ、ブロッコリー、カブなどのアブラナ科の野菜は虫が付きやすいそうで、定植の際は一枚一枚葉の裏に虫の卵が付いていないかチェックしながら手で植えます。その後防虫ネットを張り(これがまた手間のかかる作業でした!)日々虫に食われていないかチェックしつつ除草作業を行います。
また、畝を立てる際も、機械を使える場所ならいいのですが、そうでない所は鍬一本で作ります。鍬で掘った土を平らに盛り上げるだけのシンプルな作業ですが、とてつもなく難しい。2時間かけてやっと一本作った初めての畝はガタガタ過ぎて使い物になりませんでした。
「野菜作りに正解は無い」と先輩の志穂さんはよく口にします。自分が何を目指したいかによって、育て方が全く変わるからです。収量を上げるか、大きさを取るか、食味を優先するか…何をどうしたいか全て自分で考え、自分で決めて取り組むしかありません。奇しくも自分がこれまで取り組めずモヤモヤしていた人生の課題に直面していると感じました。
畑作業をしていると体はクタクタになりますが、不思議と心は疲弊しません。毎日のようにわからないこと、初めてのことに直面します。失敗もしますが弱音を吐く暇はありません。野菜の成長は人間の落ち込む時間なんて待ってはくれないからです。とにかくやるしかない。そう腹を決めて目の前の仕事に必死に取り組んでいると、これまで長いこと手放せずにいた取るに足らないこだわりが自分の中から抜けていくのがわかります。
今はなにもわからないことだらけの状態ですが、これまで気付かなかった「わからない」を自覚することから学びが始まると思うので、目の前の仕事を一つずつこなしながら、美味しい野菜を育てられるようになることが目下の目標です。どうぞ宜しくお願い致します。