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無の会便り1月号
自然農法無の会より、新年のご挨拶を申し上げます。
旧年中は大変お世話になりました。皆様の応援のおかげで、こうして無事新年を迎えることができ、感謝の気持ちで一杯です。
2023年は、無の会にとって大きな変化と挑戦の年になりました。
年初に都市部から青年2人が移住し、無の会に参画。若者4名の新体制のもと、新たな品種や栽培技術の実験、新会社設立と事業開始に向けた資金調達など、私達にとっても初めての試みの連続でした。昨年は真夏の猛暑と水不足で、基盤になるお米の生産も打撃を受け、すべてが順調というわけではありません。ですがこうした挑戦や取組が、将来的には、美味しくて食べると健康になる農作物を、皆様に安定的にお届けすることに、更には地域の未来や次世代を担う子供たちのためになると信じています。
無の会は、2024年も挑戦し続ける1年にすることを誓います。今後とも、何卒よろしくお願いいたします。
さて、昨年中の師走、私達は比較的穏やかな農閑期を過ごすことができました。農作業以外に時間を使うことができ、始めた活動の一つが狩猟です。
私たちの住む会津美里町の山には、猪や熊が数多く生息しており、近辺の田んぼや畑は甚大な獣害に悩まされています。無の会には狩猟免許取得者が2名おり、少しでも地域の役に立ちたい。そして、美味しくて新鮮な肉が食べたい!その想いから活動を始めました。
先月は2頭の猪を捕獲することができました。うち1頭は100kg級の超大物。血抜きから解体まで、かなりの重労働でしたが、知り合いのハンターさんに教わりながらなんとかやり遂げました。会津の山の中を駆け回っていた猪の肉は、臭みがなく、ジューシー。それでいてとても力強い味わいで、生命をいただく喜びを噛み締めました。
【コラムNo.4:イノシシを食べない高齢者】
新年一本目のコラムは狩猟についてです。というのも、最近会津地域では、昔はいなかったイノシシやツキノワグマが急激に増えていて、田畑の獣害被害が深刻になってきているのです。地域の70代のお年寄りたちと話してみると、獣害を意識し始めたのはここ10年くらいだといいます。10年前の会津地域では、イノシシやシカは絶滅状態で、まったく見かけることはなく、クマも相当山の奥に行かない限りは出会うことはなく、襲われる心配は全くなかったといいます。そんなお年寄りに、僕たちが獲ったイノシシのお肉をお裾分けしようとすると、「いらないいらない、そんなん食べ方わからねぇ」と断られる確率が80%です。
昨年夏に僕たちは、獣害を専門に研究されている大学の先生と、運良くお話する機会がありました。”どうして以前はイノシシやシカがいなかったのか”、また“どうしてここ10年で獣が増え続けているのか”といった疑問に答えてもらうことができ、獣害についていろいろと学べました。
まず、以前はイノシシやシカがいなかった理由は、人間がほとんど獲り尽くしたからだと言います。肉や毛皮を求めて日本中で狩猟が盛んになったころに、東北地方では、ほぼ絶滅状態になるまで数が減ったようです。広く考えられている、オオカミが獣の個体数を調整していたという説は根拠に乏しく、小柄なオオカミが大きなイノシシを襲うということは、頻繁には起きていなかったはずだと教えてくれました。また、極寒の冬に大雪が降った際に、身動きが取れなくなったたくさんの個体が命を落としたという説も、個体数がほぼ絶滅に近づいた理由としては弱いとしていました。
次に、最近会津にも獣が増えている理由は、南の関東と東の太平洋側から、餌を求めて徐々に移動してきているからだと言います。はるばる山越え谷越えやってきた獣たちにとって、会津の手付かずの原生林は、最高のバイキングなのかもしれません。
令和2年の会津地域の獣害被害額は、ツキノワグマ900万円、イノシシ4300万円でした。農業的には、イノシシが田畑を掘り起こして作物を食べ尽くしてしまうことは悪夢です。しかし悪いことに、イノシシの個体は、1年で1.2倍に増えます。このまま増えていくと、数年以内に、人間が全力を出して獲れる数よりも、増加する数の方が上回ってしまいます。あと10年も放置すると制御不能になり、会津の山も、京都の大文字山のような、高い木と馬酔木(あせび:獣にとって毒性のある植物)しか残っていない、寂しい山に変わってしまうと言います。
個人的には、仕留めたイノシシをジビエとして販売して、狩猟を安定した収入源にできたらいいなと思っているのですが、令和5年12月の公示で、放射能濃縮の観点から、福島ではジビエの出荷をしてはいけないとされています…(浜通りでは、自家消費も禁止)
ほとんどの猟師が高齢者となってしまった会津地域において、僕たち若手猟師の働きは必須です。狩られる獣にとっては迷惑な話ですが、僕たちはこれから罠を増やして、たくさん獲っていきたいと考えています。
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