無来人 堀達哉

私は58歳のおっさんです。還暦まじかのおっさんが何を思ったか、東京から電車を乗り継ぎ乗り継ぎ約4時間、福島県会津の農家、「無の会」に農業体験をするべくやってきました。

 降りた駅は無人駅で誰もいません、あっ 一人いました、私を迎えに来てくださった「無の会」のスタッフ、大島さんです、なかなかのナイスガイです。彼の運転で約10分、農園「無の会」に到着しました、ほぼポツンと一軒家!

代表の児島先生とスタッフの皆さんにご挨拶して…「って、みんな若っ!おまけにハーフの女の子までいるじゃん!なにこのメンツ、ここ農家だよね?!」っというのが私の「無の会」の第一印象でした。(後でわかるのですが、無の会のメンバーには、元旅館の若女将もいらっしゃるとのことでした。)

居間に長方形の大きなコタツがあって、そこにみんな集まり夕食タ~イム!「やったぁ~」今日はカレーです、「お腹すいたぁ~」食材はもちろんこの農園で、農薬・化学肥料を使わずに収穫されたものです。「美味し~うま~い!」お前は子供か!(笑)いえ私はおっさんでした。

私が無の会に来た理由の一つに【安心安全な食事がしたい】というのがあります、今都会では、いや日本のスーパーでは安心安全な食材が買えません、ご丁寧に化学物質が添加・振りかけられまくっています。これはある意味、食糧危機なんじゃないかと、おっさんは常々思うのでした。

 そんな私の隣で女性がカレーを食べています、「あれ、この方もスタッフさんかな?」よくよく聞いてみると、無の会にお米を買いに来たお客様とのこと、「えっ、そのお客さんが食卓囲んでカレー食べてる!」なんというアットホームさ、…こういうことは「無の会」では、当たり前のことなのかもしれません。

食後に別の部屋へ行き、「糀」(こうじ)のかき混ぜを体験しました。味噌・甘酒などの原材料、かき混ぜて乾燥させるのだそうです。

私は糀をナデナデしながら、いつか自分で味噌を作ってみたいなぁ~と思いふけっていたら、次の日早朝から味噌作りをするとのこと! マジか?やったじゃん!引き寄せたじゃん!夢かなったじゃん!具現化系の念能力者じゃん!おっさん大喜びです。

大豆・米糀・塩・そして作る人の愛情、これで味噌はできます、シンプルです、皆さんの邪魔にならないように私も手伝いました。楽しい! この後、おっさんの腰に重大な危機が迫っているとも知らずに……イタタタ…ただの運動不足からの腰痛でした(笑)

昨日みんなで食事した大きなコタツの、長方形の長い一辺を占領してくたばっているおっさんの姿がありました、私です。それを見た代表の児島先生が、「堀君!どうしたの?」と声をかけてくださいました。

「いやぁ~ちょっと腰が…」と、私

「東京で楽な甘い生活してるからだよ、足出して、ツボ押してあげるから」と、厳しくも優しいお言葉、って、まてよ、足つぼマッサージって、テレビで若手芸人が罰ゲームでくらってるあの……

「いったぁ~~~先生痛い!痛いって!ごめんなさい!改めます!楽な生活改めますからぁ~~~」

予感的中、しかしその後、不思議と疲れが取れていました。

さて、午後のお仕事、私と男性のスタッフ2人、計3人で田んぼの脇の水路掃除です、水路に溜まった泥や葉っぱをスコップでかき出します。

う~~~この作業も腰にきます、スタッフ2人は黙々と作業をしています、「なんとか終わったぁ~!」

「では、次の水路に行きます」と、スタッフ2人は、すたすたと次の現場へ、私は2人から遅れること約10メートル後をスコップを杖代わりにして、ガシャガシャと騒音をたてながら、なんとかついていきます(スコップは土砂をすくう道具です、杖ではありません、ごめんなさい。)

次の水路も完了~!私はなんとかやりきりました。「では、次行きますね!」

「…そ、そうだよね、ここの田んぼ広いもんね、これで終わりじゃぁ~ないよね…」私の心のセリフです。

もうやけくそです、残り10%のエネルギーを、どうにかこうにか使い、腰の痛みに耐えながらついに…終わったぁ~~~

ほんとに終わったんだろうか?

「ご苦労様でした、では堀さんは休んでください、私はまだこの辺りの掃除をしますので」と、スタッフさん「じゃー私もやりますよ!」という正義のおっさんのセリフは、わたしの口から発せられることはなく、またスコップを杖代わりにして、一人よろよろと母屋へ帰っていきました。

 もはや私の指定席と化した居間のコタツの一辺で、本日2度目のマジくたばり…

「堀君!どうしたの?」これまた本日2度目の、児島代表のお言葉。

「いやぁ~先生、田んぼの脇に小さな水路があるでしょ、そこの掃除をしていたのです。」

「あ~そうなんだ、堀君の姿が見えないから散歩にでも出かけたのかと思ってたよ、」

いやいや先生、私も微力ながら、お手伝いしてたんですよ……手伝っていた…私はほんとうに手伝っていたのでしょうか?

無の会の人達は休まない、一つの仕事が終わると次にはまた何かをしている、誰に言われるでもなく黙々とあたりまえのように動いている。

くらべて私の口からは、つらい、腰が痛いと愚痴ばかり、これは天と地ほどの差があるんじゃないのか?

 甘い!甘い!甘い!甘い!甘い!甘い!甘い!甘い!甘い!甘い!甘い!甘すぎる!全くもって甘すぎるぞ!おっさん!!

この甘さを軸にいままで生きてきたのか?…いや気づいていたはずだ!それと向き合うのが怖かっただけじゃぁ~ないか!

……少し熱くなってしまいました…

 さて、甘さに気づいたのなら、認識したのなら後は行動です。私は残りの人生でどういう軸を作っていくのでしょうか?

この甘い軸のまま生きていくのか、こうありたいという新しい軸を作っていくのか、自分のことながら、みものです。

長くなってしまいました、まだ書きたいことはあるのだけれど、この辺で筆をおきますね。

 最後になりましたが「無の会」の皆様、こんなおっさんを快く、やさしく、また厳しく迎えて下さりありがとうございました。

 また3度、3度の食事、ホントにおいしかったぁ~~~  ごちそうさまでした。 

それでは、また!

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