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無の会便り5月号 byおかちゃん
コラムNo.6 10年間を振り返って
byおかちゃん
僕は先月の4月1日をもって無の会に丸10年いたことになる。当時の無の会は農業を何十年もしてきたようなベテランが誰もいない中で、新人の立ち位置も決まっておらず、児島先生はただ「考えて無の会のために働いてくれ、考えてやれないなら無の会にいられないから」と言っていたことを覚えている。近隣の人のなかには児島先生に利用されることを危惧したのか、無の会にいてはお前がダメになると言ってくる人もいた。しかし児島先生は、当時から血縁関係もなく、実家が農家でもない若者を受け入れようとしていた。何か前例のない動きをいちはやくここから具現化していきたいという思いがあったのだろう。農業の可能性を拓く場が全国に現れていないことに対する危機感が、はっきりと10年前の僕に伝わってきた。もしこれが児島先生の私利私欲だったのであれば、僕はとうに無の会をやめていたと思う。
1年目はとにかく児島先生についていき、2年目は大学中退を決意する。3年目は若者が若者を呼ぶ農業しか未来がないと考え、4年目はグローバルGAPを率先して勉強する。5年目は紙マルチ田植え機を乗りこなし、6年目はコンバイン、農機の牽引を独学で覚え、7年目で米作りの段取りを主体的に考えるようになった。8年目は同年代が有機農業に取り組みはじめ、9年目は学生が学生を呼ぶ農園となることを予感し、10年目は組織内の役割分担と協調を考えるようになった。
無の会を訪れる若者から「なんで10年間も無の会にいたんですか?」とたまに聞かれることがある。ここが素晴らしい農園だということも、数年前に誰かに言われて初めて認識できたくらい、これまでやってきたことの良し悪しの判断もつかない自分にとって、正直答えはすっと出てこない。でも、児島先生とあえて話し合うこともなかった農業界に対する危機感、これを乗り越える農業の形を徹底して追い続ける自由が、この農園にはあった。そんな中で、無の会は人生をより豊かで有意義なものにしていくことができる場所になるのではないかと思うようになった。そして、そんな場を共に築きあげていく後輩や仲間に出会いたいと心のどこかで願っていた自分がいた。これが僕が無の会に居続けた本当の理由だと思う。
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